人事労務の「作法」

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062.定額減税が実施されます

昨今の物価上昇に対する経済政策として、6月から「定額減税」が実施されます。今回の制度は複雑で分かりにくいという声が聞かれますが、通常の給与所得者の方は、特に何も手続きは必要ありませんので、会社が行う減税処理に任せて、制度の狙いである経済の循環に貢献して頂きたいと思います。

今回の制度は、給与所得者1人につき所得税から3万円、住民税から1万円の計4万円が控除される仕組みです。扶養親族についても同額控除されます。例えば、給与所得者に専業主婦の妻と扶養する二人の子がいれば16万円の控除です。

所得税については、6月以降の給与または賞与で源泉徴収される所得税額から、定額減税の控除額が差し引かれます。一度に控除しきれない場合は年内に支払われる給与や賞与で源泉徴収される税額から残額が控除されます。それでも控除できない場合は年末調整で控除されます。

住民税については、6月分の住民税は徴収されず、定額減税による控除分を差し引いた税額が、7月から来年5月までの11ヵ月間で均等分割して徴収されます。

対象者は、所得が給与所得だけの場合、年収2000万円以下の方です。年俸制で年収が2000万円を超えることが明らかな場合でも定額減税を実施して、確定申告の際に減税を受けた分を含めて納税する必要があります。

給与計算ソフトに減税対応ツールが備わっていれば良いですが、そうでなければ一人ひとりの減税額を何ヶ月も個別に管理する必要があり、給与計算担当の方には大きな負担となります。最終的には年末調整や確定申告で精算するのであれば、その際に一括して処理しても良さそうにも思います。

この件について林官房長官が、減税処理を行わないと労働基準法違反になるという発言をしています。最初は意味が分かりませんでしたが、どうやら賃金の全額払いの原則に反するということです。労働基準法第24条で、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とされている部分です。減税を行わないと手取り額が減少し、全額を支払っていないことになるからです。

給与計算担当の方にはご苦労をお掛けしますが、日本経済活性化のためにご協力をお願いします。

 

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