人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

020.副業・兼業解禁の第一歩

社会の流れに沿って、副業・兼業を解禁しようとする企業にとって、一番気がかりなのは労働時間の通算問題ではないでしょうか。

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算され、勤務先が2箇所の場合でも、「1日8時間、1週間40時間」という労働時間の制限に変わりありません。例えば、本業で1日8時間勤務の後や週末にコンビニでアルバイトしたら、コンビニでの勤務は最初から法定時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要です。

本業が小売業で、副業でコンビニのアルバイトというパターンは、本業に役立つ知識経験を身につけることができるでしょうが、本業が金融業など、副業の経験が本業に活かし難い場合などは、単に収入目当ての副業になってしまいます。

ただでさえ本業が忙しい状態なのに、企業が社員が収入を増やす目的の副業を認め、長時間労働や健康障害防止のための配慮を行うというのは、納得し難いものです。

一方で、副業側の企業としては人手不足が深刻で、割増賃金を支払ってでも副業人材を受け入れたいという事情もあり、両社の思惑はすれ違う場合もあります。

このような企業間での事情の違いは、各社の努力によって解決するほかないですが、労働者に対する企業の対応方針は一定の基準を設けておく必要があります。

そこで、副業・兼業を解禁する第一歩としては、労働基準法が適用されない個人事業主としての働き方に限るところから始めてはどうでしょうか。個人事業主であれば、労働時間に関する規定が適用されません。

例えば、社会保険労務士などの士業を副業とするのであれば、労働者性が無い働き方が実現できます。士業でなくても、本業で培った専門知識を活かしたコンサル業を始めることでも良いでしょう。その後、効果を測定しながら徐々に個人事業主以外の、ほかの企業に雇用される働き方にも副業の範囲を広げていくのが良いと思います。

本業の企業からみれば、機密情報が保持され、競業避止義務が担保された上で、社員のキャリアアップが図れ、本業に活かせる知識経験が高まる副業・兼業であれば、積極的に認めることを考えてはどうでしょう。

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