人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

019.副業・兼業を認めますか?

2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、副業・兼業を推進する方針に転換したように思われます。副業・兼業を禁止した従来のモデル就業規則からも、その条項が削除されています。

日本企業は元々副業・兼業については消極的な姿勢でした。主な理由は次の通りです。

1.長時間労働を助長するため

2.労働時間の把握が困難なため

3.情報漏洩のリスクがあるため

4.人材の流出につかがる恐れがあるため

しかしながら、厚生労働省ガイドラインを示した以降、副業・兼業を認める企業の割合は急激に増え、最新の経団連の調査では、約7割の企業が副業・兼業を認めている、または認める予定としています。副業を禁止した就業規則の違反者に下した懲戒処分が無効とされる裁判例も出ています。

こうした流れの中、社員から副業・兼業の希望が出た場合、使用者としてはどう対処すべきか頭を悩ますのではないでしょうか。若い社員であれば、副業・兼業に手を出す以前にそもそも本業をしっかりやってもらいたいというのが使用者側の本音だと思います。

厚生労働省が副業・兼業を推進する背景には、労働力の確保やイノベーションの創出といった企業側の事情を考慮しての他、労働生産性の低迷による実質賃金の停滞を補填させようとする労働者側の事情も考慮しているのでしょう。人生100年時代を生き抜くために、年金財源にも限りがあることから、自助努力によって備えなさいという圧力を感じなくもありません。

今後、企業としては頭ごなしに副業・兼業を禁止する事は難しいでしょう。かといって無条件に認めるわけにはいきません。本業への影響度により可否の基準を設けることになるでしょう。

業種によってその基準は大きく異なるでしょうが、一つの考え方について次の機会に論じたいと思います。

 

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