人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

064.人事制度の構築(19) 評価要素を評価につなげる

前回までに評価制度において用いる評価要素は、「能力」、「行動」、「成果」、「情意」であることと、それぞれの要素の内容について述べてきました。今回は、これらの評価要素を具体的に評価につなげる手順について解説します。

繰り返しになりますが、 人事評価は人材育成を目的として行うものです。組織が進む方向に自身の能力開発のベクトルを合わせ、組織が成長発展する過程に参画意識を持ち、その結果、自身の能力も高まる事が実感できるようにするのが狙いです。社員の能力開発に向けての取り組みやその成果が、組織が期待する水準と合致しているかを明確にする事が人事評価であり、その差を埋めるためのモチベーションを喚起して人材育成につなげます。人事評価は、下図の人材育成サイクルに組み込まれたステップの一つです。

ただし、人材育成の方向性は職能や役割の段階によって違います。041の記事で示した下図の複線型人事制度において、それぞれのコースごと、等級ごとに重視する評価要素は当然違います。

例えば、一般職の下位等級では情意のウエイトが高く、上位等級に昇格するにつれて、情意のほか能力や行動のウエイトが高まってきます。成果はそれほど重視されません。総合職でも下位等級の段階では情意のウエイトが高いですが、上位等級では一般職と違って能力や行動のほか成果も重視します。

一方、管理職層では、情意や能力が備わっている前提で役職に任命されていますので、重視するのは行動と成果です。上級管理職になるほど成果のウエイトが高まります。

詳細なウエイトは、各企業において複線型人事制度の構成と各等級に応じた割合を定めて下さい。

次に、評価ランクの決定の仕方としては、職能基準書、役割基準書の定義に応じて能力、行動、成果、情意それぞれ5段階で評価し、先ほどの各要素ごとのウエイトで換算し直します。このとき、5段階評価は数値化した方が分かりやすいでしょう。評価ランクは048の記事で述べたとおり、一次評価は絶対評価で、二次評価は相対評価とする事を忘れないで下さい。また、最終的な評価ランクは、046の記事で述べたとおり、SS,S,A,B,Cの5段階とする事も思い出して下さい。

今回で人事制度を構成する二つ目の要素である評価制度についての解説は終了です。次回からは三つ目の要素である賃金制度について解説します。

 

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