人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

069.人事制度の構築(20) 賃金制度の概要

人事制度を構成する三つの要素のうち、等級制度と評価制度についてはすでに見解を示してきました。今回からは三つ目の要素である賃金制度について考察します。
賃金制度とは、企業が賃金をどのような思想や基準で社員に支払うかを体系立てたものです。賃金制度は企業の事業戦略に基づいて設計されることが多く、それにより社員のモチベーションの向上や新卒、中途採用時のアピールにもつながります。ただし、賃金制度は業績の悪化等の企業の都合で一方的に条件を下げることはできません。それだけに、将来に向けての人員構成や人件費予算も考慮し、持続可能な制度、基準とすることが必要です。
賃金制度を構築する際のポイントは、人事制度全体の整合性を図ることです。つまり、等級制度や評価制度に即して賃金制度も組み立てる必要があります。例えば、等級制度において能力の伸長に重きを置いた能力主義の制度を組み立てたなら、その能力の伸長の段階に応じて賃金も上昇する仕組みとします。また、評価制度において、能力、行動、成果、情意を評価の要素としたならば、この四つの要素の優劣が賃金に反映する仕組みとします。

筆者が一連の「人事制度の構築」で唱えてきた能力成果主義的な人事制度を構築する上では、一般社員層と管理職層に分けて、それぞれの階層に求められる要件に沿って賃金制度に落とし込む作業を行います。詳細は次回以降順に説明します。
ところで、賃金とは労働基準法第 11 条で、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と定義されています。また、賃金については「男女同一賃金」、「同一労働同一賃金」、「賃金支払の五原則」、「最低賃金」と言ったように労働法の制約が数多くあります。 等級制度や評価制度は法的な制約はなく企業独自の方針で構築することができますが、賃金制度についてはこれらの法的要件を踏まえたうえで構築する必要がある点は注意が必要です。
更には、賃金制度を構築したら就業規則や賃金規程に明確に定めて、運用することが重要です。社長の一存で金額を増減させることの無いようにしましょう。

 

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