人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

045.人事制度の構築(10) 人事評価の目的は人材育成にあり

今回からは、人事制度を構成する二つ目の要素である評価制度について考察します。

評価制度に基づいて行う人事評価は、社員の処遇決定のツールですが、それだけに特化し過ぎると必ず不満が出てきます。厳しい評価をする事で社員のモチベーションが低下することもあり、逆にモチベーションの低下を避けるために甘い評価をすると、公正な評価とは言えません。また、評価者によって評価基準がまちまちでは、評価制度の信頼性が担保できません。

このような人事評価に関わる弊害を生まないためにも、評価制度を構築する際には、人事評価の目的を明確にする必要があります。

一言で言えば、人事評価は人材育成を目的として行うものです。組織が進む方向に自身の能力開発のベクトルを合わせ、組織が成長発展する過程に参画意識を持ち、その結果、自身の能力も高まる事が実感できるようにするのが狙いです。社員の能力開発に向けての取り組みやその成果が、組織が期待する水準と合致しているかを明確にする事が人事評価であり、その差を埋めるためのモチベーションを喚起して人材育成につなげます。

ここで、人事評価と人材育成の関係性を図示すると次のようになります。

 

人事評価の結果は処遇に反映しますが、その先にある人材育成や人材活用につながっていきます。職務のローテーションや責任ある地位への異動や任命を通じて能力を高め、行動する事で更に大きな成果を期待します。その期待に応えることができれば、より大きな処遇を得て次の段階へと進みます。このようなサイクルを繰り返すことで人材育成、能力開発が実現するのです。つまりは、人事評価は人材育成サイクルに組み込まれたステップの一つと言えます。

上の図では、人事評価の対象範囲として、情意をベースに能力、行動、成果を取り上げています。今までに示してきた能力成果主義の下では、この4要素が人事評価の基本的な評価項目であると考えています。

これらの評価項目については、改めて解説します。

 

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