人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

042.人事制度の構築(9) 職能等級・役割等級の定義

今回は、前回示した複線型人事制度を盛り込んだ職能等級制度と役割等級制度の等級定義の仕方について考えます。

前回示した体系図において、一般社員層には職能等級制度を適用します。先ず、各等級における人材の定義を明確にします。例えば、入社したばかりの総合職1等級は、「社会人としての基本的な知識を有し、所属する部門の基幹業務のうち担当業務について、所定のルールや上司の指示に従い処理できる能力を有する」と定義します。総合職3等級では、「所属する部門全般の業務知識を有し、その部門の基幹業務のうち担当業務について、独力で処理すると同時に後進に対して担当業務とその前後工程について指導できる能力を有する」と定義します。

ここでのポイントは、「○○する能力を有する」という表現です。総合職は部門異動を繰り返して昇格していく前提ですので、他部門で3等級の能力がある人は異動先の部門でもその能力があると見なすところが職能等級制度の便利な点です。「○○できる」という表現にすると、部門異動した人は新しい部門の業務は未経験な事が多いため、等級定義と能力が一致せず、かと言ってその人の等級を下げることはできないため、運用上の支障が出ます。等級の定義を定めるうえで、職種ごとの職能要件をできるたけ共通化した方が良いというのはこのことからです。

一方、管理職については役割等級制度を適用します。例えば、M1等級の人材定義では、「部門内の管理職として、部門方針に基づき、チームメンバーを指導育成しながら部門目標達成に導く」と定義します。M3等級では、「部門長として、経営方針に基づき、他部門との連携を取り、企業業績の最大化を図る」と定義します。一般社員と違うのは、「○○を行う」という表現をすることです。管理職には成果主義を適用することから、原則として部門異動は無く、必要な能力は身につけた上で、培ってきた分野で成果を出す事が求められます。

このように、一般社員と管理職で等級に関する考え方を分けて運用する事で、能力成果主義に基づく等級制度構築が可能となります。

次回からは、人事制度を構成する二つ目の要素である評価制度について考察します。

 

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