評価制度を構築する上で、何を評価の要素として取り入れるかは、制度の根幹に関わる部分です。
045の記事において、人事評価の要素は「能力」、「行動」、「成果」、「情意」にある事を述べました。今回はこれらの評価要素について考察します。
先ず、一つ目の評価要素である能力は、能力成果主義的な人事制度の展開においては、職務遂行能力(職能)のことを指します。職能等級ごとに必要な能力要件を定め、能力の伸長に合わせて職能等級の上昇(昇格)を行っていく仕組みです。ここでの能力の捉え方として、一つは経験によって積み上げてきた能力で、「保有能力」のことを指します。その能力を発揮する機会がなくとも、保有していれば要件を満たすことになります。
もう一つは、保有能力のうち実際に発揮された能力(「発揮能力」)で、成果につながる能力です。この発揮能力は、高い成果を出す人材に共通してみられる行動特性で、一般的には「コンピテンシー」と呼ばれます。つまり、二つ目の評価要素である行動については、能力の一部であるコンピテンシーという概念で組み立てます。コンピテンシーについては改めて解説します。
一つ目の評価要素である能力の評価においては、どのような保有能力を必要とするかについて、各企業で独自に要件を整理することになりますが、一般的に以下のような要件はいかがでしょうか。
①知識・技術
・業務上必要な知識や技術
②企画・提案力
・業務上のアイデアを企画し、提案する能力
③計画・実行力
・計画を立て進捗を管理し、効率的に最後までやり遂げる能力
④折衝・調整力
・社内外の関係者との折衝や調整を円滑に行い、取りまとめる能力
⑤指導・人材育成力
・メンバーの能力を見極め指導し、人材育成を行う能力
⑥コミュニケーション力
・自分の考えを相手に伝え、相手の考えも理解する能力
このような保有能力について、職能等級ごとに求める要件定義を行い、その要件を満たしているかどうかを評価することが、能力評価の手順の第一歩です。