人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

070.人事制度の構築(21) 月例給与の構成

今回からは賃金制度の組み立てについて詳しく述べていきます。

賃金制度を構成する賃金とは、名称を問わず労働の対償として事業主が労働者に支払う全てのものをいい、一般的には月例給与、賞与、退職金を指します。このうち、先ずは月例給与について考えます。

月例給与とは毎月定期的に支払われる給与で、賃金支払の5原則に基づいて支払われます。賃金支払の5原則とは、労働基準法第24条において、(1)通貨で、(2)直接労働者に、(3)全額を、(4)毎月1回以上、(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されているものです。

月例給与は基本給と諸手当で構成されます。

基本給は賃金制度の考え方によって様々な給与があります。年齢給、勤続給、能力給、職務給、役割給、成果給といった具合です。基本給はこれらの給与を単一で構成するだけでなく、複数の給与を組み合わせることも可能です。ただし、トレンドとしては、年齢、勤続、能力などの属人給から、職務、役割、成果といった仕事給の割合が拡大しています。等級制度や評価制度などの他の人事制度との整合を図って組み立てる部分です。

一方、諸手当は残業代などの法令上の制約があるものを除くと、必ず支給しなければならない手当はありません。一般的には、仕事給の割合が増えるにつれ、諸手当は縮少する傾向にあります。それでも諸手当を支給するなら、福利厚生としての支給と割り切って、限られた原資を何に投入するかを検討しましょう。例えば、子育て世代の社員が多い企業であれば家族手当を設けるとか、資格取得を推奨するのであれば資格手当を設けるとかです。ちなみに、従来広く支給されていた通勤手当は、在宅勤務の普及により、廃止される動きが強まっています。

ただし、一度手当を支給すると、企業の都合だけで一方的に廃止したり減額したりはできません。通勤手当を廃止するにしても、実費支給とするとか、他の手当や基本給を増額するなどの代替の措置が必要です。

人事制度の考え方は時代の流れにより変遷します。賃金制度も人事制度の動きに応じて適合できるように、できるだけシンプルな構成としておくのが良いでしょう。

 

人事・労務ランキング社会保険労務士ランキング