人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

033.人事制度の構築(3) 能力主義と成果主義の比較

今回は能力主義成果主義の違いを解説します。

能力主義とは、業務遂行上の能力を評価基準として処遇に反映する「人基準」の制度です。能力主義における能力とは、知識・経験などのインプットされた保有能力(職務遂行能力)のことを指します。

能力主義の下では、労働力の対価として賃金が決定する「職能給」が取り入れられます。能力は年齢や勤続に応じて伸び続ける前提で、降給という概念はありません。新卒で採用し、その企業で必要な知識経験を身に付けたゼネラリスト育成することを目指した制度です。

能力主義のメリットは、人事異動が報酬に影響せず、柔軟な異動が可能となります。それにより、組織固有の知識、スキルの蓄積に適している反面、貢献度と報酬が見合わず、特に働き盛りの中堅層の優秀な人材が定着しないというデメリットがあります。

次に成果主義とは、業務遂行による成果を評価基準として処遇に反映する「仕事基準」の制度です。

成果主義では、保有する能力に関わらず、アウトプットされた成果で賃金が決定する「職務給」や「役割給」と親和性が高い制度です。成果が出ない場合は、能力主義にはない賃金が減額する降給の概念も存在します。即戦力スペシャリストを中途採用し、その専門性を活用する事を目指した制度です。

成果主義のメリットは、一人一人の貢献に見合う報酬とする事ができるため、モチベーションが向上するなど、優秀な人材確保に優位です。

一方で、短期の成果を追いがちになり、また自分の成果を追う余りに他者とのコミュニケーションが悪化しがちだというデメリットがあります。

このような違いがありますが、能力主義を導入するか成果主義を導入するかという選択の問題ではなく、それぞれの企業の風土も考慮の上、「人」に着目(人基準)するか、「仕事」に着目(仕事基準)するかを見極め、それと賃金をどのように紐づけるかを慎重に判断することです。

筆者の見解では、能力主義成果主義に偏った制度とするのではなく、双方の良い点を組み合わせたハイブリッドな仕組みが良いと考えています。

次回以降は、具体的な制度設計について展開します。

 



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