人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

053.退職決断前に考えてもらいたい事

各企業に新入社員が入って2週間が経過します。新入社員もそろそろ新しい環境に慣れてきたところではないでしょうか。

ところが、すでに退職したり、退職を考えている人が一定数存在するようです。しかも、最近では、本人が直接退職を申し出るのではなく、退職代行サービスを利用して退職交渉を行う人もいるようで、非常に驚きです。

もちろん理由は様々あるのでしょうし、労働契約の解除の申し出はいつでも行うことができるのですが、インターネットニュースなどを見ていると、どうやら聞いていた労働条件が実際とは違っていたという理由が多いようです。

労働条件については、一般的に求人票で公開し、会社説明会などでも質問が多い項目です。さらに事前に労働条件通知書を交付していれば、行き違いはそれほど起きないものですが、それが違っているのなら、大抵は企業側に問題があります。有りがちなのは、採用を担当する人事からは原則的な労働条件を伝えられていたが、実際に業務を行う現場では、そのような建前は通用しないこともありズレが生じるのでしょう。

ただし、このズレが、例えば給与の額が違うとか、労働時間や休日数が違うとかの重要な労働条件の相違であれば、会社に改善を申し出たり、叶わないならば監督官庁に相談するという方法もあります。

一方で、そのズレが、例えば残業は殆ど無いと聞いていたが、実際は10時間程度の残業があったとか、飛び込み営業はないと聞いていたが、実際は営業成績を上げるには飛び込み営業をせざるを得ないといった企業の人事権の範囲の相違なら、簡単に退職を決断する前に考えてもらいたい事があります。

それは、その企業の経営理念や行動指針、社会での存在意義を今一度確認する事です。もちろん入社前や入社後の研修で説明があったと思いますが、その企業の一員となった段階で改めて見つめ直した時に、経営理念や行動指針に共感でき、社会からの要請を実現することを自分事に考えられるのであれば、残業や飛び込み営業を拒絶するだけではなく、前向きに捉えられるのではないでしょうか。つまり、企業活動への参画意識を持つことによって、労働条件は自ずと付いてくるものです。

 

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