人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

024.労働時間の意味を正しく理解しましょう

労使間でトラブルの原因となる事案の一つに、労働時間の問題があります。従業員から未払い残業代を遡って請求されたという話も時々聞かれます。

労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であり、実際に労働している時間の他、指揮命令下の準備、片付け時間も含みます。使用者は労働時間に対して賃金を支払う義務がありますので、労働時間とは「賃金の支払い義務が発生する時間」ともいえます。

労働時間に関してトラブルとなるのは、「出社時刻・退社時刻」と、「始業時刻・終業時刻」の解釈の相違によるものが多いでしょう。出社時刻から退社時刻までが労働時間となるのではなく、あくまでも始業時刻から終業時刻までが労働時間です。このことを混同すると、朝、始業時刻に遅れないように余裕を持って出社した時間や、終業後に同僚と雑談している時間も労働時間となってしまう可能性があります。

一般的に労働時間の記録手段は、①管理者が日々確認、②労働者の自己申告、③タイムカード、④勤怠管理システム等ですが、記録時間の客観性を担保するためには、タイムカードや勤怠管理システムを利用する必要があります。自己申告による記録では、パソコンの作動記録や入退館の記録などとの照合が求められ、自己申告による労働時間との乖離理由が明確でないと、すべて労働時間とみなされる場合もあります。

また、タイムカードを導入する場合も、出社、退社時刻に打刻するのではなく、始業、終業時刻に打刻するように規程に定め、徹底させなければなりません。ただ、タイムカードの打刻機が会社建屋の入口にあり、就業場所と離れている場合などは、一旦は出社、退社時に打刻させ、のちに始業、終業時刻を申告し、管理者が確認するなどの手順を踏む必要があります。その意味では、どこにいても打刻できる勤怠管理システムが一番適していますので、予算が許せば導入を検討すべきでしょう。

労働時間については、この他にも法定労働時間、時間外労働、休日労働、36協定等に関する様々な人事労務課題があります。これらは改めて論じることにします。

まずは労働時間の意味を正しく理解し、その記録を適切に管理することで、労使のトラブルを回避しましょう。

 

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