人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

030.所定労働時間は何時間ですか?

労働時間に関し、法定労働時間と所定労働時間の違いを理解しているでしょうか。

法定労働時間とは、労働基準法32条で定める「1日8時間、1週40時間」の労働時間の上限のことをいいます。この時間を超える労働に関しては、時間外労働の割増賃金支払い義務が生じます。

一方で所定労働時間とは、就業規則等で会社が定めた労働時間で、法定労働時間を超える時間を定めることはできません。例えば、所定労働時間を1日7時間と定めれば、8時間までの1時間については割増賃金支払い義務はありませんが、割増なしの平均賃金は支払いが必要です。また、所定労働時間が1日7時間であれば、月曜日から金曜日の他、土曜日も5時間まで労働させることも可能です。但し、既に土曜日が休日の定めをしている場合は不利益な変更となりますので、変更の必要性を十分に考慮する必要があります。

この例のように、所定労働時間を法定労働時間と同じ8時間とはせず、少し短い時間とすることで、労務管理に役立つことがあります。

先ず、所定労働時間が7時間の会社と8時間の会社があれば、外から見た印象としては7時間の会社の方が労働環境が良いように感じます。これは、人材を集める上で大きなメリットです。

次に、36協定を管理する上での時間外労働削減効果も見込めます。

所定労働時間が7時間の会社であっても、36協定でカウントするのは1日8時間を超える時間ですが、労働者からみれば、所定労働時間の7時間を超えるといわゆる残業という認識でしょう。使用者は、労働者のそのような意識に便乗し、7時間を基準に労働時間管理を行い、労働時間削減の啓蒙活動を行うのです。7時間を基準に労働時間管理を行えば、一定時間の時間外労働を見込んだとしても36協定に抵触する事案は起きないでしょうし、その結果、労働時間の削減につながります。更にその効果で、外から見た労働環境の印象がアップするという好循環が期待できます。

日本企業のホワイトカラーの生産性は低いといわれています。会社に拘束されている所定労働時間内は、会議や打ち合わせが多く、またその時間が長くなりがちです。所定労働時間を短くすることで無駄な時間が削減され、効率よい業務遂行が期待できそうです。

 

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