人事労務の「作法」

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018.裁量労働制は最良の制度なのか

2024年4月より、裁量労働制に関する改正法が施行されます。

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制がありますが、適用される人数が多い専門業務型裁量労働制とは、「業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務については、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度(一部略)」と定義されています。

具体的には、情報処理システムの設計やインテリアデザインの業務など、使用者による指揮命がそぐわない業務に限られます。

何年か前の政府の答弁で、裁量労働制の労働者は一般の労働者よりも労働時間が短いという内容の発言がありましたが、後にこのデータは誤りであることが判明しました。どう考えてもその通りで、裁量労働制長時間労働の温床であると指摘されています。

そのため、今回の法改正では、裁量労働制を適用するには本人の同意を得ることと、同意の撤回の手続きを定めることが義務付けられます。

仮に労働者が同意しない、あるいは同意を撤回した場合、通常の労働時間管理を行い、使用者が指揮命令を行い、労働時間を厳密に管理することになります。

しかしながら、そもそも裁量労働制が適用されるのは業務遂行の手段や方法、時間配分を労働者の裁量に委ねる必要がある業務であり、そのような業務を行う労働者の労働時間管理を行うのは違和感があります。同じチームに同意した人と同意しない人が混在しては、使用者としては管理が煩雑になります。

かと言って同意を強要するのは違法ですが、同意しない人は従事する業務を変更せざるを得ない場合があることを事前に説明しておく必要があるでしょう。

裁量労働制は自由度の高い労働環境を提供し、生産性の向上が期待できる制度ですが、法に基づく厳密な運用がされていない可能性があります。現に、労使協定で定めるみなし労働時間と実際の労働時間が乖離していたり、適用業務を拡大解釈すると、労働基準監督署の指導が入ります。今回の法改正はそのような盲点を埋める策の一つであり、今後ますます行政の指導は厳しくなると思われます。この機会に制度適用の可否を再点検し、来年の法改正に備えましょう。

 

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