人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

037.人事制度の構築(6) 三つの等級制度

今回は三つの等級制度の詳細について解説します。 

①職能等級(或いは職能資格)制度

職務遂行能力の伸長段階によって等級区分する制度です。1960年代の高度経済成長期に普及し、現在でも広く採用されています。

職能等級制度では、等級と職務内容または役職が必ずしも一致しないため、処遇の大きな変更を伴わなくとも人事異動を柔軟に行うことができます。また、一定の年齢に達するとポスト不足が問題となりますが、職能等級制度では等級で処遇できるため、ポスト不足にも対応できます。

逆に、等級と職務内容が一致していない事で賃金と職務がバランスせず、また、ポスト不足問題が解消する反面、人件費が高騰します。

②職務等級制度

従事する職務の内容や難易度によって等級区分する制度です。成果主義を徹底する企業での導入が目立ちます。

職務等級制度では、職能等級制度では課題である職務と賃金のアンバランスが起きず、職務に見合う合理的な賃金となります。その結果、総額人件費を抑えることができます。

一方で、職務が変わらないと賃金が上がらないため、人事異動には対応し難く、組織が硬直化するというデメリットがあります。

③役割等級制度

与えられた役割の大きさによって等級区分する制度です。役割の定義は職務等級制度で行う職務分析ほど手間はかからず、比較的導入しやすい制度です。職務等級制度のデメリットを改善したような制度です。

役割等級制度では、職務等級制度と同様に役割と賃金がバランスし、総額人件費も抑えることができます。

一方で、役割の定義は職務の定義ほどは明確ではなく曖昧なため、社員の理解が得られ難い点がデメリットです。

三つの等級制度は以上のとおりですが、では、どの制度を導入すべきかについては、今までに示してきた人事制度の基本的なフレームを現した下図を参考にしてください。

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筆者の見解としては、職務等級制度が導入できるのは一部の大企業、もしくは若い社員が多い新興企業に限られると思います。大部分の中堅中小企業では、今でも日本的雇用慣行が色濃く残っていることから、等級制度としては職能等級制度を基本とし、評価の要素に能力と成果をバランス良く取り入れる事です。図の人基準から仕事基準に切り替わる「能力成果主義」あたりが、何れの制度の利点をも組み込む事ができるという点で最適でしょう。

この前提で次回以降、見解を展開します。

 

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