人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

036.人事制度の構築(5) 等級制度は人事制度の骨格

今回からは、人事制度を構成する要素の一つである等級制度についての見解を示します。

人事制度における等級とは、一定の要件で従業員を区分・序列化し、権限や責任、処遇などに結び付ける基準となるものです。そしてこの等級は、人事制度を構成するほかの要素(評価制度、賃金制度)に連動することから、人事制度の骨格を成す部分です。

等級によって従業員を区分・序列化することで、「目指す人物像」に近づくための段階やレベルが明確になり、人材育成に効果的です。また、その等級ごとに評価の基準や賃金額が定められますので、合理的な集団マネジメントが可能となると同時に、処遇に対する納得感が高まります。

このように等級制度は、単に人事制度面からのアプローチだけで組み立てるのではなく、人材育成や集団マネジメントといった経営戦略面からの観点を踏まえて組み立てることで、企業の従業員に対する明確な意思表示となりますので、自社に適した等級制度を設けましょう。

ところで、等級と同じように従業員を区分する基準として、「職群」というものがあります。職群とは等級よりも大きな区分であり、職群には企画的業務に従事する総合職群と定型的業務に従事する一般職群といった区分や、組織マネジメントを行うマネジメント職群と特定の専門分野のスペシャリストとなるスペシャリスト職群といった区分があります。

等級の下位段階から上位段階に移行する(一般的には昇格といいます)に伴い、各人の組織内における能力や成果の発揮の仕方には個人差が出ることから、予め職群という区分でコースを分け、それぞれのコースに応じて人材育成や集団マネジメントを行う仕組みです。このような制度は「複線型人事制度」と呼ばれ、等級制度に合わせて導入するのが良いと考えます。複線型人事制度については改めて論じます。

等級制度において従業員を区分・序列化する方法は、一般的に三つのパターンがあります。一つ目は「職能等級制度」、二つ目は「職務等級制度」、三つめは「役割等級制度」です。どの等級制度を採用するかは、前回までに論じた能力主義成果主義か、或いは人基準か仕事基準か等の考え方で、従業員を区分・序列化する基準をどこに置くかで決まります。

次回からは3つの等級制度について解説します。

 

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