人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

012.通勤災害に該当する?・しない?

会社に届け出ている通勤経路以外の経路で通勤途中に事故にあった場合、労災が適用されるかといった質問をよく受けます。大都市圏では公共交通機関の発達により、複数の鉄道路線を利用できることは珍しくありませんので、質問の意図は理解できます。

通勤災害における通勤とは、「住居と就業の場所の間を合理的な経路及び方法で往復すること」と定義されています。

ここで「合理的な経路」とは、必ずしも一つの経路に限らず、通常利用する経路が複数あれば、いずれも合理的な経路となります。また、当日の運行事情により迂回して通勤する場合も合理的な経路となります。

ただし、特段の理由なく、著しく遠回りとなる経路を利用することは合理的な経路とは言えません。

最近では、在宅勤務の普及により通勤定期券代(あるいは通勤定期券現物)の支給から、通勤費実費支給に切り替える会社が増えていますので、定期券を購入せず日々精算を行う人もいます。この場合、利用した経路よりも高額の経路で請求するような不正が起きうることも想定しておく必要があります。また、その不正を隠すため、通勤災害自体を隠すことも考えられます。

不正を未然に防止するため、また労災隠しを起こさないため、予め不正に対する懲戒の規程を用意してくことが重要でしょう。また、ランダムに抽出した社員から通勤経路と通勤費請求の実態を調査することがあるということも規程に盛り込んでおきましょう。