人事労務の「作法」

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028.自転車通勤には気を付けて

コロナ禍において、通勤ラッシュの密を避けるため、自転車通勤が注目されました。また、ちょうど健康志向やCO2削減の風潮とも相まって、一種のブームともなっています。

自転車通勤といえば今までも、最寄駅まで自転車でというケースはよくありましたが、最近では勤務先まで10㎞以上も自転車で通勤する人もいます。

国土交通省は「自転車通勤導入に関する手引き」を策定し、自転車通勤を推奨していますが、だからと言って準備が不十分なまま飛びつくのは危険です。

国土交通省の手引きには、自転車通勤のメリットとして、①経費の削減、②生産性の向上、③イメージアップ、④雇用の拡大(以上会社側のメリット)、⑤通勤時間の短縮、⑥身体面の健康増進、⑦精神面の健康増進(以上従業員側のメリット)を挙げています。確かに実現すればどれも大きなメリットです。

しかしながら、事前の準備として以下の対応が必要な事を認識して下さい。

1.駐輪場の確保、飲酒運転の防止、ヘルメット着用推進などの交通ルール対応。

2.交通事故が起きた際の社員本人の補償及び加害者となった場合の相手への損害賠償。

3.公共交通機関利用による通勤費用と自転車通勤費用の差額調整。

4.発汗による周りへのスメルハラスメント防止策。(着替えのためのロッカーやシャワー室の設置)

特に交通事故の際の相手への損害賠償については、当然に傷害保険への加入を義務付けますが、社員本人の過失であっても、会社が全く知らんぷりする訳にもいかない場合もあるでしょう。死亡事故が起きた場合などは、社員本人と連帯して損害賠償を行う準備をしておく必要があります。

自転車通勤を認める前提には、これらの課題に対応した規程を策定し、希望する者からの届出・承認のルールを明確にしておきましょう。このような課題を解消して初めて、上記のメリットが実現するということを認識して下さい。

 

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