人事労務の「作法」

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029.無期労働契約への転換対策が必要です

労働契約法の改正により、2013年4月以降、有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申し込みによって無期労働契約に転換できるルールができました。

契約社員などの有期労働契約で働く人にとっては、雇止めの不安が少しでも解消する点では進歩したと言えます。

一方で、企業側は無期労働契約への転換に備える必要があります。

一つは無期労働契約への転換前の対策であり、例えば、5年を超える長期間の雇用を前提としない業務の場合は、契約更新の都度、契約期間の上限を明確に伝えることです。また、長期雇用の可能性がある業務であっても、その契約社員の能力が劣る場合には、改善すべき点をきちんと指導し、次回の更新時までに改善が見られないときは契約更新を行わないことを伝えましょう。いずれの場合も契約更新を繰り返すに連れて、契約社員側の期待感が高まりますので、雇止めを行うには契約更新時の面談で上記方針を明確に伝えて、面談記録を残しておきましょう。

このような無期労働契約への転換を前提としない有期労働契約については、5年以内に契約が終了するための事前の対策が必要です。

もう一つは、無期労働契約に転換した後の対策です。

労働者が無期労働契約への転換を希望した際、労働契約期限の定めが無いと、70歳でも80歳でも本当に無期限に労働契約が継続することになります。そこで、契約社員就業規則等で、無期労働契約に転換した契約社員の定年年齢を正社員と同様に60歳と定めておくのが一般的です。更に、65歳未満の定年を定めた場合の雇用確保措置としての再雇用制度を65歳まで設けましょう。また、60歳を超えて無期労働契約への転換を希望した場合に備え、第二定年を65歳に設定しておくことも必要です。

契約社員の雇止めについてはトラブルがつきものです。余計なトラブルを招かないよう、準備をしておきましょう。

ちなみに契約社員が無期労働契約に転換しても、正社員となるわけではありません。処遇は有期労働契約時と変わらないことが多いでしょう。そこで、長期間の労働契約が継続することのインセンティブとして、無期労働契約転換時に処遇のアップを検討してはどうでしょうか。

 

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