人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

032.人事制度の構築(2) 人事制度の変遷

人事制度構築の前提として「目指す人物像」が明確になれば、そこに至るまでの段階を何をもって等級付けし、どのような基準で評価し、何に対して賃金を支払うのかを考察します。人事制度が主に等級制度、評価制度、賃金制度から構成されていることから、この考察は人事制度構築の入口であり、かつ根幹となる部分です。

この根幹となる部分の考え方は、時代の流れに応じて変遷しています。

日本の人事制度に関する考え方は、戦後の生活の安定を目指した「生活主義」から始まります。混乱した世の中で生きていくことに重点が置かれました。

1960年代からの高度経済成長期においては、年齢と勤続年数に基づく「年功序列主義」が台頭しますが、生活重視の制度であることには変わりありません。

1970年代後半からは、オイルショックや高度経済成長の終焉により、年功序列主義により増え続ける人件費負担に限界が出始め、職務遂行能力を重視した「能力主義」へと向かいます。

その後、1990年代初頭のバブル経済崩壊により、担当する職務内容とその成果を重視した「成果主義」へと移行します。

各段階への切り替わりのタイミングでは、前後の制度をミックスした中間的な制度も見られました。例えば、年功序列主義から能力主義への移行の段階では、「年功的能力主義」や、能力主義から成果主義への移行の段階では、「能力成果主義」と言ったように。

これから人事制度を構築する際には、このような時代の流れに沿うだけでなく、自社に適した考え方を盛り込む事が重要です。現在では主流となっている成果主義も、その弊害から見直しや廃止を検討する動きも出ています。

かと言って今更年功序列主義には逆戻りできず、筆者の見解では、能力主義もしくは成果主義に近い制度に集約されるのではないかと考えています。その中で、各企業の想いを落とし込んで制度設計を行うことになります。

次回は、能力主義成果主義の比較を行います。

 

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