人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

026.役職定年制の今昔

役職定年制を導入している企業の割合は約30%で、大企業ほどその割合は高くなっています。

役職定年制とは、部長や課長といった役職に就いている社員が、一般的には50歳代半ばの所定の年齢に達した時に、その役職を離れる制度をいいます。役職定年制が普及した背景には、それまで55歳定年が一般的だったところ、1994年に60歳未満の定年が禁止されたことにより、人件費の抑制と組織の若返りを図るねらいがありました。

役職定年制の導入により、上の世代の役職者が退き、優秀な若手社員に昇進の機会を与えられ、人材の新陳代謝や活性化が期待できるメリットがあります。一方で、役職定年を迎えた役職者のモチベーションの低下が問題視されています。

ところが近年、役職定年制を廃止する企業が増えているようです。年功序列制が崩壊し、能力主義から成果主義に移行しつつある現在、年齢を基準として役職を離れる役職定年制は、能力や成果を評価軸として処遇を決めるうえでそぐわない考え方です。能力と成果次第では、定年まで役職に就く人もいれば、40歳代で役職を解かれる人も出てくるのです。ある意味自然な流れです。

それでも役職定年制を維持するには、役職を離れた人のモチベーションの低下問題に対策が必要です。60歳定年から65歳定年に徐々に移行しつつある中、50歳代半ばで役職定年を迎え、その後10年間のモチベーションをいかにして維持するかは、企業にとっても社員にとっても大きな問題です。

人事制度面での対策としては、人事制度を複線型とし、部長・課長等のラインマネージャーコースの他、スペシャリストコースやアドバイザーコースを設け、役職定年を迎えた社員を新しく就任した部長や課長のラインから切り離すことが一つの方法です。更に、リスキリングを支援する方策を用意することも必要です。

一昔前、役職定年制は若手社員の登用を意識した制度でしたが、今ではどちらかと言えばベテラン社員の活性化を目指した制度に切り替わっているところは興味深いですね。

 

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