人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

041.人事制度の構築(8) 複線型人事制度の有効活用

複線型人事制度とは、一つの企業のなかに複数のキャリアコースを用意し、各社員の志向や適性に応じてコースを選べる制度の事です。

複線型の構成は各社の事情により千差万別ですが、キャリア志向面での区分としては、業務の中核を担い、責任と全国規模の転勤が伴う総合職と、サポート業務中心で異動転勤の範囲が狭い一般職に区分されます。賃金面での処遇は総合職が高く、一般職は低く設定される傾向にあります。

また、キャリア適性面での区分としては、組織運営や人材育成を主業務とするマネジメント職と、特定分野の専門家として新技術やサービスを社内外に発信するスペシャリスト職に区分されます。マネジメント職は組織の規模により人数に制限がありますが、決してマネジメント職から溢れた人がスペシャリスト職になるのではなく、キャリア適性に応じて区分します。その意味ではマネジメント職とスペシャリスト職の賃金面での処遇は同一とする必要があります。

複線型人事制度を導入するメリットは、社員の希望やライフスタイルに応じたキャリア選択が可能となることからモチベーションやエンゲージメントが向上することと、単線型の人事制度では処遇出来なかったスペシャリスト職をマネジメント職同等に処遇することで、企業内に高い技術や知識の蓄積が可能となることです。

上記区分を複線型人事制度の体系図にすると、下のとおりです。

実は、複線型人事制度は職能等級制度や役割等級制度との親和性が高く、一緒に運用しやすい制度です。この体系図に各等級の目指す人物像と能力、役割定義を追加すれば、複線型人事制度を盛り込んだ職能定義書、役割定義書となります。

日本企業ではゼネラリスト志向が強く、複数の職種を経験した後、希望や適性によってマネジメント職に進むのかスペシャリスト職に進むかが決まってきます。複線型人事制度をうまく活用することでジョブ型雇用ではできない人材育成が可能となります。

 

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