人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

039.人事制度の構築(7) 能力成果主義での等級制度

前回までの解説で、人事制度の枠組みとしては「能力成果主義」が最適であるとの指摘をしました。よって、今回はこの前提に基づく等級制度の在り方について考察します。

能力成果主義の下では、若手から中堅層までは能力の伸長を重視した能力主義を展開することが最善であり、そこでは職能等級制度が適当でしょう。

職能等級制度における職能とは職務遂行能力を指し、保有能力と発揮能力が評価の対象となります。新卒社員は発揮能力は小さく、保有能力が大部分を占めるところからスタートし、成果につながる発揮能力を高めていくことが能力開発の方向性です。

職能等級制度を導入する際のポイントは、目指す人物像を明確にした職能区分を行い、それぞれの区分に応じた「職能基準書(あるいは職能要件書)」を作成することです。職能基準書の作成においては、営業部門や開発部門、事務部門等の職種ごとに必要な能力項目を拾い出し、それぞれの職種ごとに定義する方法もありますが、運用が複雑にならないこと、また、職種間のレベルに統一性を持たせることを優先すると、能力項目は可能な限り共通化し、共通化できない能力項目のみ別に定義するのが良いと思います。

また、等級の段階は多すぎても少なすぎても運用が難しく、5段階程度が良いでしょう。段階が多すぎると、一つ上または一つ下の段階とのレベルの違いが明確にできず、職能基準書で「……ができる」と「……が概ねできる」といった表現が多発し、納得性が得られ難いものとなります。逆に段階が少なすぎると、上の段階とのレベル差が大きくなり、それは昇格まで時間がかかることを意味し、社員のモチベーションの維持に支障が出ます。

一方、管理職手前のベテラン層から管理職に至る層については、必要な能力はほぼ身に付けている前提で、その能力を使ってどれだけの成果を出すかに評価の基軸が移行することから、成果主義を重視した役割等級制度が適しています

役割等級制度においても職能等級と同様に役割基準書を作成することがポイントです。ここでも運用が複雑にならないようにするため、役割の定義は部門ごとに細かく設定せず、部門長の役割、部門内の管理職の役割といったように、役職に連動した定義が良いと思います。

役割の段階としても多すぎず、少なすぎず、管理職候補者、課長クラス、部長クラスの3段階程度でしょう。

次回は、複線型の人事制度について考察します。

 

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