人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

016.即戦力中途採用の謎

日本の企業でも人材の流動化が進み、転職市場が活況を呈しています。

募集の条件としてどの企業でも即戦力を求めていますが、そもそも即戦力など市場に存在するのでしょうか。

ある企業で営業成績が優秀でも、顧客や販売する商品が違う別の企業で同じような営業成績が残せるとは限りません。また、経理部で簿記の資格を保有していても、使っている会計ソフトが違えばオペレーションを一から覚える必要があります。

優秀な社員が急に他社に引き抜かれた場合など、現場は混乱し、とにかく急いで採用しようとしがちですが、人事の人間からみれば、冷静さに欠けた行動だと思います。現場は経験を重視する傾向にあり、他社で優秀な成績と聞けば、他の要素が見えなくなってしまいがちです。もちろん経験も重要ですが、人事の人間はそれ以上に人となりを重視します。

新しい職場で今までのような成績が残せるかどうかは、その企業の風土や職場環境、周囲の人間関係の影響が大きいのです。企業風土は簡単に変えられないことから、その環境に中途採用の社員が適応できる柔軟さを持っているかということです。

そういう意味では、即戦力など存在せず、環境に適応するまでは丁寧に指導する必要があります。この過程を踏まず、受け入れ側も本人も即戦力だと過信するあまり、環境に適応できずに短期間で去っていく人もいます。

中途採用を行う際は、決して現場任せにせず、人事の目で人となりをしっかりと確かめてから採用しましょう。