人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

035.人事制度の構築(4) 能力主義と成果主義の併用

今回は、能力主義成果主義それぞれの良い点を取り入れたハイブリッドな仕組みの人事制度の構成について論じます。

日本では最近急速にジョブ型雇用が普及し始めていますが、学校教育システムが従前のままだと、新卒一括採用で総合的な能力の向上を目指すメンバーシップ型雇用が主流となります。現に、文科系の学部を卒業した大学生が、入社直後から役立つ業務知識を身に付けているかというと、そうではないでしょう。となると、20歳代のうちは能力の伸長を重視した能力主義が適しています。

一方、30歳代からは徐々に成果主義の要素を取り入れ、40歳代以降は成果を重視した制度へと切り替えます。つまり、新卒の段階からジョブ型雇用の下で成果主義を適用するのは無理があり、年齢や経験に応じて能力主義重視から、成果主義重視へとシフトさせていくのが良いと考えます。

但し、能力と成果は全く別物ではなく、相互に関連します。能力と成果を円で表すと、①の重なり合った部分が成果に結びついた能力です。②は成果に結び付かない能力、③は能力を超えた成果です。若い間は①のほか③よりも②を重視した評価を行います。逆に中堅からベテラン層は①と③を評価要素とします。

若いうちは当然成果の円は小さいですが、将来成果につながる能力の円を広げる事に注力します。中堅以降は能力の円よりも成果の円を広げ、しかもその円が能力の円と重なるようにする事です。③の能力を超えた成果は、運が作用することもあり、いつも成果がでるとは限らない事が難点です。

このように能力主義成果主義を併用する事で、どの世代にも目指す人物像が明確になり、そのための教育の方針も立てやすくなります。

優秀な人材が豊富な大企業や最先端の技術開発を行う企業などは、ジョブ型雇用が成り立つ環境にありますが、大部分の中小企業などは、人材の確保と育成が最重要課題です。そのような中小企業では、ジョブ型雇用ではなく従来からのメンバーシップ型雇用で、能力主義成果主義を併用した人事制度が適していると筆者は考えます。

次回以降は、人事制度を構成する等級制度、評価制度、賃金制度についての見解を展開します。

 

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