人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

043.働かないおじさんの真実

働かないおじさんに批判が集まっているようです。

働かないおじさんとは、休憩が多い、新聞やインターネットばかり見ている、居眠りをしているなど、本当に働かない人だけでなく、真面目にコツコツと仕事をするが、新しいことにチャレンジせずに決められたことを忠実にこなす人も含まれます。共通するのは、主に中高年で期待される成果が出ていないにも関わらず高い賃金を得ている社員のことを意味します。昭和の時代にも、窓際族という言葉がありました。窓際族はどちらかと言うと哀れんだ言い方でしたが、働かないおじさんは悪者扱いされているところが昔と違います。

しかしよく考えたら、このような社員は昔からいました。最近急に問題視されている背景には、人事制度が関係しています。

働かないおじさんと呼ばれている人は、年功を重視した人事制度で育ってきました。若い頃は貢献よりも低い賃金で我慢してきた世代です。能力主義的な人事制度では、貢献と賃金がバランスするのが40代で、以降は貢献よりも賃金が上回ります。若い頃の「貸し」を回収している世代です。

昔は若い世代も、自分たちも同じ道を歩むので中高年に対して不満は持っていませんでした。ところが最近では、若い世代にも成果主義を導入する企業が増え、成果以上の賃金を得ている中高年に対しての批判が高まったのです。自分たちが中高年になったときに、今の中高年のような賃金が得られないだろうと考えるからです。

このように考えると、働かないおじさんへの批判は、働かないことではなく働き以上の賃金を得ていることについての世代間の不公平にあるのです。中高年にしてみれば、「約束が違う」ということになるのですが、いくら世代によって事情が違うからとは言え、このままでは若い社員のモチベーションが低下します。

中高年には厳しいですが、昔のように年功によって処遇できる時代ではありませんので、貢献と賃金がバランスするような改善が必要です。一つは人事制度面からの改善で、これは当ブログで現在連載中の「人事制度の構築」で改めて解説します。もう一つは中高年自身がリスキリングに取り組むことも必要でしょう。

かく言う筆者も例外ではなく、リスキリングに取り組まねばと考えている次第です。

 

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