人事労務の「作法」

企業の人事労務課題を使用者側の立場で解決します

050.人事制度の構築(13) 人事評価にエラーは付きものです

人事評価は人が人を評価するものであり、評価者の感情や主観がどうしても入り込み、適切な評価が妨げられることがあります。このような評価の誤りを評価者エラーと呼びます。

代表的な評価者エラーは以下の通りです。

①ハロー効果……際立つ特徴に目を奪われ、実際よりも高い評価を付けてしまう現象。

②パスト・アンカリング・エラー……評価対象期間外の事象を誤って参照してしまう現象。

③期末誤差……直近の事象に引きずられて評価してしまう現象。

④中心化傾向……評価が標準的な中央に偏ってしまう現象。

⑤寛大化傾向……評価が甘く相対的に高い評価を付けてしまう現象。

⑥対比誤差……評価者自身の能力を基準に評価してしまう現象。

⑦逆算化傾向……初めから落とし所となる総合評価を念頭に置き、そこから逆算して評価を付けてしまう現象。

この中で、評価の目的を充分に理解していない評価者が最も陥りやすいのは、中心化傾向と寛大化傾向です。そこでは、上位の評価や下位の評価よりも、中央に偏った評価となります。特に、部下に悪い評価を付けることは、部下のモチベーションを低下させ、上司と部下の信頼関係や人間関係を悪化させる可能性があると考えがちで、敢えて悪い評価を避けてしまいます。その結果、中央からやや上位の評価に集中してしまうのです。

このような中心化傾向や寛大化傾向の評価者エラーを避けるには、日頃から評価される社員に関して、評価につながる事象を多く集めて記録し、その事象を評価基準に則して丁寧に評価することが重要です。また、前回論じた絶対評価相対評価の併用において、部長による二次評価の段階で、これらのエラーを是正する事が求められます。

冒頭に述べた通り、人事評価にはエラーが付きものです。ただし、人事評価の目的が人材育成にあることを前提に考えると、評価者エラーによって評価された結果が意味をなさないことは明白です。評価者エラーを少しでも出さないようにするためにも、評価者は評価される社員の日頃の働きぶりをよく観察し、公正に評価することがその社員の成長につながるということを理解したうえで評価を行いましょう。

 

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