子供の教育の話ではありません。企業において若い世代を育成する手法として、一昔前のように「背中を見せる」だけでは通用しない時代です。部下の育成には、管理者が丁寧に指導する必要があります。
そもそも管理者の仕事は、ドラッカーが言うように人間の能動性を奮い立たせることにあり、知識の詰め込みではなく正しいものの考え方を育む取り組みを通じて部下を育成することにあります。人材の育成は管理者の重要な仕事の一つなのです。
育成の手法としては、最近は部下は褒めて伸ばすのが効果的とされています。確かに人間関係を良好に保つためには相手を意識的に褒めることは重要です。ところが積極的に褒めてはいるものの部下の反応は鈍いと言った悩みはないでしょうか。かと言って叱れば良いかというとそうでもありません。重要なのは手法ではなく、ドラッカーが言うように能動的に考え行動する部下に成長させるという目的です。
部下が能動的に考え行動するには、内発的動機づけを高めることが必要です。管理者との関係性において内発的動機づけを高めるには、部下が管理者を信頼し、この人のようになりたいと思わせることです。
褒めるか、叱るかの手法の選択において参考となる、アメリカの心理学者アロンソンとリンダーが提唱した「好意の互恵性」という理論があります。
上司が部下に評価結果などを伝える場面において、部下が上司に対して持つ好意は、1から4の順に高くなると言われています。
1.最初は褒めて後から叱る評価
2.最初から最後まで叱る評価
3.最初から最後まで褒める評価
4.最初は叱り後から褒める評価
これによると、叱るだけでも褒めるだけでもだめで、双方を織り込んで、しかもその順番が非常に重要といえます。1と4では同じことを伝えるにしても、部下の内発的動機づけには大きな影響があります。
管理者が人材育成において目指すのは、褒めて伸ばすか叱って伸ばすかの手法の選択ではなく、部下一人ひとりの内発的動機づけを高めるために、褒めると叱るを戦略的に取り入れる事なのです。